New York Dolls_2
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ニューヨーク・ドールスのアルバムは私の知らないところで有名になっていた。

ある日スタジオ・マネージャーが

「トシ、CBSレコードから電話がかかっているよ」

「何故?」

「知らない、自分で電話に出て確かめなさい」

私は恐る恐る電話に出た――英語がうまく話せない私にとって、電話での会話はできる
だけ避けたかった。

「ハロー トシですが」

「トシ、CBSのJohn Bergだが話したいことがある。なるべく早く私のオフィスに来て欲しい」

「明日の11時ではどうでしょう」

「結構、場所は解るね。CBSビルのXX階だ、受付で私の名前を言ってくれ」

「サンキュー!(^^)!」

あの有名なCBSレコードのアート・ディレクターJohn Berg、『Chicago』などのビッグ・ネームのアルバムをデザインしている彼から電話があった。彼の名前はアート・ディレクターだった頃から知っていた。

しかも、見学ではなく、アポイントメント有りでCBSビルに入れるとは、六番街の53丁目の角にあり、有名な目のロゴ(ルー・ドルフスマンがデザイン)を付けているビル。

写真家としてよりも元デザイナーの自分の方が興奮していた。

その時の撮影は、残念ながらアルバムにならなかった。アーティストをCBSがドロップしたのだ。

次はスタジオの仲間ロバートの出身地英国から、ふらっとスタジオに立ち寄った青年、
名前はウイル。

彼が分かりやすく私に話してくれたなかで、凄いのは彼の父は何もせず、趣味としてロールス・ロイスの博物館を持っていて、40台ほどある中で一番お気に入りは、マハラジャが虎狩用にサーチライトなどを装備した特注の車だとか。

そのウイルが、私がニューヨーク・ドールズのアルバムを撮ったことを知り、英国で見たローリング・ストーン誌などに、大きく扱われた画像を撮った私のファンになり、半年ほどスタジオに居着いてしまった。

私の英語では理解できなかったが、彼は何処かの侯爵の子息であり、ホテルのシェフを父に持つロバートは非常に丁重に会話をしていたようだ。

そのウイルとテキサス・エルパソに撮影に行った。

空港で機材などを車に積み込んでいた時、若い女性が「どこで公演するの」と聞いてきた。私たちの恰好を見て、ミュージッシャンと間違えたらしい。ウイルは1メートル90センチ近い大男、長い金髪、ロングコートに金色のブーツ。私も長髪、ベルボトムのジーンズに白い皮のブルゾン。

撮影するのは、新しくこの街に建った、デパートの玩具売り場のカーペット――これが現実。

そのウイルも巨大なキャデラックをレンタルしてロスまで旅し、ニューヨークに戻り、英国へはクイーン・エリザベス・2(QE2)で大西洋を渡って帰って行った。

そして昨年2008年、先輩の鋤田さん(デービッド・ボーイ、T・REXなどを撮影)より電話があり。

「トシさん、ニューヨーク・ドールズのアルバムの写真を欲しがっている人がいるよ、ネガをまだ持っている?」

もちろん持っているが、プリントを焼くには、逗子に引っ越して暗室が無いことを説明したら、問題ない、原宿のナショナル・フォートの暗室をレンタルすれば良いとのこと。

アルバムの写真を欲しがっている人は、ヒステリック・グラマーの北村さん、彼は、青年の頃からこのアルバムの画像が大好きで、クレジットでToshiだから、日本人だと思っていたそうだ。

最近知り合いになった鋤田さんに聞いて、私が撮ったことが解ったのだった。

彼にグループ、各アーティスト、それに8x10で撮影したエドガー・ウインターのプリントを収めることとなり、(デジタル処理をしたものは受けつけてくれなかった)プリント、スポッティングなどに1カ月もかかった。そのうち3点が彼のところからTシャツとして製品化された。

音楽雑誌「The DIG #52 2008 Spring」も「ロック・フォトグラファーズ」の特集でアルバム撮影話、画像などを掲載してくれた。

ニューヨーク・ドールズを撮影してから35年が経っていた。

上の6点の画像はネガからデジタル処理をした。

ニューヨーク・ドールズのTシャツを着たトシ

New York Dolls_1